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【2022年版】企業におけるシステムの内製化事例とそのメリット・デメリットをまとめてみた

導入

近年、システムの内製化がトレンドになっています。
2022 年 6 月 13 日には、家電量販店のビックカメラがシステムの内製化をし、DX を進めることを発表しました
システム内製化の動きは IT 企業だけではなく、家電量販店やアパレル、旅行業界などといった非 IT 業界にも広がっています。


しかし、内製化をするからと言って、すべてうまくいくわけではありません。
そこで、今回は実際に内製化した事例をいくつか紹介し、そこから内製化のメリット・デメリット、そして内製化を成功させた事例の共通点を探ってみたいと思います。


今回の目次です。

  • システムの内製化とは
  • システムの内製化事例
    • うまくいった事例
    • あまりうまくいかなかった事例
  • システム内製化のメリット・デメリット
    • メリット
    • デメリット
  • システム内製化を成功させる秘訣
  • まとめ

システムの内製化とは

まずはシステムの内製化について簡単に紹介します。
システムの内製化とは、外注していたシステム開発を社内だけで行うようにすることです。
一般的には、システムを外注する場合、以下のような流れでシステムを開発します。
外注の流れ
システムを外注する場合、まず SIer と呼ばれるシステム開発を行う会社に開発を依頼します。
そして、依頼を受けた SIer はシステムの設計と必要な人員・期間の見積りをし、発注した企業にシステム開発費を提示します。
実際に開発を行う(プログラミングをしてシステムを作る)のは下請け企業のエンジニアで、1 次受けの設計書の通りにシステムを作成します。


一方、内製化すると、基本的には自社で雇ったエンジニアがシステムの設計から開発・テストなど、システム開発のほぼすべてのプロセスを担当します。
外部とのやり取りがなくなるため、うまくいけば開発コストを下げ、スピードを上げることができます。
内製化した場合

システムの内製化事例

今回はうまくいった例を 3 つ、あまりうまくいかなかった例を 1 つ紹介します。

うまくいった事例

ファーストリテイリング(ユニクロ・GU)

開始時期2015 年
理由消費者のニーズにリアルタイムで対応するため
メリット・スピード感高く最新テクノロジーを導入できる
・エンジニア視点での業務改善提案
・機能改善がしやすくなったことで現場からの提案が増えた
エンジニアの人数100 名以上(2022 年)
結果・2015 年比で営業利益が 150%増(2021 年 8 月末)
・グローバルアプリ会員 1.4 億人(2021 年 8 月末)

まず最初に紹介するのは、ユニクロや GU で有名なファーストリテイリングです。
この企業は経営者である柳井正さんが IT の重要性を早期から見抜き、早いうちから内製化に力を入れていた企業です。


CTO の方は内製化の重要性を以下のように語っています。

事業の変革を考えるとき、そのカギとなるのは、高度な IT 知識自社の業務及びシステムへの深い理解です。 これらが備わっていなければ、適切な判断を下すことは難しい。だからこそ、業務部門と IT 部門が同じ熱量で、同じ目標に向かって協力していくことが必要になる。 特にお客様が直接触れる店舗や EC の領域は、みなさまの期待に直結します。求められるものをスピード感をもって実現するには、開発組織の内製化による高度な技術力の獲得は絶対条件でした
https://newspicks.com/news/6706856/body/ より引用)

つまり、顧客のニーズを読み、スピーディーに機能追加するためには、自社でシステムを作ることが不可欠ということです。
また、エンジニアを採用する際には、技術だけでなくエンジニアから業務改善の提案ができるか、チームで成果を出せるかといったことも重要視しているようです。

デジタルコマースプラットフォームの構築にあたって、ファーストリテイリングに加わったメンバーは、これまで IT 業界の最前線で経験を積み、幅広いデジタル業務に精通している人材ばかり。 だから、業務部門からシステムに関する要望が上がっても鵜呑みにせず、『そもそも業務をこう変えるのはどうですか?』と本質的な解決につながる逆提案もできるんです
https://newspicks.com/news/6706856/body/ より引用)

カインズ

開始時期2018 年
理由Amazon など、ライバルの同業他社の技術に危機感を抱いたため
メリット・トライアンドエラーを気軽に繰り返せる
・現場から修正依頼を気軽に出せる
・店舗とのコミュニケーションが増える
エンジニアの人数200 名(2022 年)
結果・数年間で売り上げが約 400 億円上昇
・売上高業界 1 位になる
・開発能力が 2 倍、コストを 15%削減

2 つ目に紹介するのは、ホームセンター大手のカインズです。
内製化を始めたきっかけは、Amazon のイベントに行った際に感じた危機感だそうです。

僕はけっこうカインズ顧問としては長くやってるんですけれども、「IT 小売企業宣言」が出たのは 2018 年の正月だったかな。その前年に顧問として土屋(裕雅)会長に呼ばれて、Amazon の「AWS re:Invent」というイベントに行っているんですね。この時に、一応僕が解説しながらいろいろなブースを回っていて、「これはちょっとやばいね」と。
https://logmi.jp/business/articles/326636 より引用)

そこから会長主導で「IT 小売企業宣言」が出され、CDO 兼 CIO の方が内製化できるエンジニア組織作りを進めたようです。
エンジニア専用の給与体系や仕組みづくり、組織の立ち上げ話までこちらの記事で詳しく語っています。
結果として、内製化前より開発能力が 2 倍、コストも 15%削減できたようです。

この内製化によって、だいたい今は 2 年前の 2 倍ぐらいの開発能力を持っています。コストとしては、15 パーセント削減された状態。ある一定規模の量があれば、こういうふうに削減しながら開発能力を持つことは可能なのかなと思います。
https://logmi.jp/business/articles/326644 より引用)

ベイクルーズ

開始時期2014 年ごろ
理由スピード感のある変革を進めるため
メリット・外的要因による業績変動リスクの低減
・EC と実店舗の相乗効果を高めるシステム開発が可能
・顧客データを最大限活用できる仕組みを作れる
エンジニアの人数EC 事業内だけでデザイナーなど含めて約 200 名
結果・自社 EC サイトは 391 億円(2021 年時点)
・直近 5 年間で 6 倍に増加(2021 年時点)

最後に、ユニクロに次いで国内アパレル EC 売上高 2 位のベイクルーズについて紹介します。
内製化に取り組んだ理由は、スピーディーに自社にあったシステム開発をするためだそうです。

SPA(製造小売)は、自分たちで商品を売る力をつけなければなりません。 「生活者との繋がりを創出する」という EC サイトのミッションのもと、10 年程前から自社 EC サイトの運用を内製化しており、意思決定から施策実行までを自分たちでスピーディーに動かせる組織を作っています。(中略)現在コロナウイルスが流⾏していますが、こういった予測不可能な状態で EC サイト売上を前年⽐ 165%にできたのも、⾃社で素早く意思決定をして、アクションに移せたためだと思っています。
https://martechlab.gaprise.jp/archives/interview/25304/ より引用)

システムの内製化によって、新規のアクティブ会員数や客単価、店舗と EC のクロスユース率などの可視化が可能になったそうです。
そしてこれらのデータをもとに意思決定を行う「データドリブン」な組織づくりを進めているそうです。

また EC 事業内をデータドリブンな組織にしていくために「KPI ツリー」を作り、売上高という KGI を達成するための課題点を明らかにするようにしています。具体的には、KGI に紐づく KPI、たとえば新規のアクティブ会員数や客単価、店舗と EC のクロスユース率などをすべて可視化し、売上増を妨げている課題箇所が数値としてわかるようにしています。それぞれのデータを可視化したことで、チームメンバー間で“数字で見ていく文化”が根付き、それが結果的に EC 事業の成長につながっていると感じています。
https://markezine.jp/article/detail/36757 より引用)

あまりうまくいかなかった事例

小売り大手 A 社

開始時期2020 年
理由他社より優れたシステムをスピーディーに開発するため
エンジニアの人数1000 名以上
結果・諸々の反発により組織解体

名前は伏せますが、有名小売り大手 A 社のケースではあまりうまくいっていないようです。
その理由としては以下の 3 つが挙げられていました。

  • エンジニアとの待遇差などが原因で社内の他部門から反発が出た
  • 既に取引のあった SIer やコンサルの反発が出た
  • 経営陣が外部から引き抜いた方一人に内製化を丸投げしていた

やはり、色々なしがらみがあると、内製化が進まないようです。
ただ、この企業も組織の立て直しを図っているようで、再度内製化に向けて組織を作っているようなので、今後は大きく改善するかもしれません。


システム内製化のメリット・デメリット

ここでは、今まで紹介してきた事例から、システム内製化のメリット・デメリットをまとめてみたいと思います。

メリット

メリットは以下の 5 つです。

  • スピーディーにシステムの改善ができる
  • 社内で改善提案が出やすくなる
  • データを活用し利益を増やすことができる
  • システム開発のノウハウがたまる
  • コスト削減につながる場合がある

順に紹介していきます。

スピーディーにシステムの改善ができる

やはり、内製化をする最大のメリットは、外注の場合に比べて圧倒的に早くシステムの改善ができることです。


外注の場合は機能を 1 つ追加するたびに見積もりを取り、外注先に機能の説明や詳細仕様の検討を依頼しなくてはいけません。
外部の会社のため、それぞれの会社で会議を複数回行い、合意できなければさらに長引くなど、気軽に機能追加ができづらい状況になってしまいます。


その点内製化をすれば社内で完結するため、顧客の反応を見てその都度修正するといったことができるようになります。
結果として顧客のニーズに合った使いやすいシステムを作ることができるようになります。

社内で改善提案が出やすくなる

内製化をすると、現場やエンジニアから社内で改善提案が出やすくなります。
今までは機能を追加するのにコストがかかることから改善の提案が出しづらかったところが、気軽に追加できることで現場から改善提案を上げやすくなります。


また、エンジニアの技術的視点からの改善提案が出やすくなります。
具体例としては、サイトやアプリの表示スピード向上などです。
エンジニアは技術的に何が可能かを理解しているため、経営者では気づかない課題を見つけることがあります。


結果として経営者の目線に加えて、現場やエンジニアからボトムアップに改善することで、顧客の満足度が向上し、他社に対して優位性が高まり、利益を増やすことができます。

データを活用し利益を増やすことができる

これは内製化が成熟してきた場合ですが、顧客データを分析し活用する仕組みを作ることで売上を増やす施策を打つことができるようになります。


例えば、アプリを頻繁に開くが購入しない顧客に対し、クーポンをアプリで送ることで購買意欲を高めることができます。
ベイクルーズでは実際に顧客のデータを活用し適切な施策を打つことで EC の売上増加につなげたようです。


外注でも不可能ではありませんが、追加で高い費用が掛かるか、他社との差別化ができないため、内製化をしたほうが良い点です。

システム開発のノウハウがたまる

内製化をすることで数多くの失敗や困難にぶつかります。
しかし、その経験は会社にとって大きな財産となります。


組織が成熟し内製化が成功すれば、内製化する組織を作った経験をビジネスにすることも可能です。
実際に内製化支援サービスがいくつか存在します。
また、内製化に取り掛かる際はまずこういったサービスに手伝ってもらうというのも手です。
実際にファーストリテイリングは、アクセンチュアに手伝ってもらったようです。

コスト削減につながる場合がある

すべての場合ではありませんが、内製化によってコスト削減につながる場合があります。
実際にカインズの例では、15%のコスト削減に成功しています。


コスト削減の効果が特に大きい場合は、システムを常に使いやすく改善していく場合です。
このような場合では、新しい機能を追加するたびに外注するよりも、自社でエンジニアを雇ったほうがコストを下げることができます。

デメリット

デメリットは以下の 3 つです。

  • 内製化の組織を作るのが大変
  • 優秀なエンジニアを雇うのが大変
  • 形になるのに時間がかかる

内製化の組織を作るのが大変

やはり、どのインタビュー記事を見てもエンジニア組織を作るのに苦労をされていた印象です。
そもそもエンジニアからの認知度がない状況でどうやってエンジニアを集めるのか、エンジニア専用の給与体系や制度を作ること、エンジニア育成の仕組みなど、仕組み作りで工夫を凝らしている印象でした。
具体的な事例で引用した記事に詳細は書かれているので、時間のある時に確認して見るとヒントになるかもしれません。


成功例で共通していたことは、経営者と社内の理解を得ながら、技術に強い方を中心に組織作りをしていた点です。
特に経営者の方の強い後押しがある企業は、内製化に成功している印象でした。

優秀なエンジニアを雇うのが大変

昨今の IT エンジニア不足によって、優秀なエンジニアを雇うのは難しくなっている印象です。


大企業は高額な年収を提示できますが、中小企業やベンチャーでは難しいと思います。
このため、給与以外でエンジニアに魅力的な仕組みづくりをしたり、エンジニアの成長を見込んで有望な若手やエンジニアを目指す学生を活用したりすることで、少しでも優秀なエンジニアを自社に採用する必要がありそうです。

形になるのに時間がかかる

新しく組織を一から作るわけなので当然すぐには変わりません。
特に、大企業になるほどこの傾向は顕著になります。
どの例でも 3 年~ 5 年はかかっている印象があります。
ある程度試行錯誤する期間を考慮し、計画を立てる必要がありそうです。

システム内製化を成功させる秘訣

最後に各事例から、システム内製化を成功させるための秘訣をまとめます。

技術に詳しい方に組織作りをしてもらう

具体的な事例を見る限り、もし技術に詳しい方が社内にいない場合、外部から招くことが王道のようです。
そしてその方にエンジニア組織を作ってもらう必要がありそうです。


エンジニアを採用するにしても、技術のことがわからなければ適切に評価できず、相場より低め、あるいは高めの値段で契約をしてしまう可能性があります。
もし心配であれば、助言をしてくれるエンジニアの知り合いや内製化支援サービスなどの意見を参考にするのがよさそうです。

社内の理解を深める

エンジニア専用の給与体系や制度は時として社内の反発を招くことがあります。
カインズの例では、エンジニアを別会社としカインズに出向する形にして実現したようです。


また、具体的な事例にもあるように、内製化の意味を経営陣から説明し、社員の理解を深めることも重要なようです。
エンジニアも他部門とコミュニケーションをとり、システムの改善をしていくことで内製化のメリットを実感してもらえるように工夫する必要があると思います。

経営陣が強く後押しする

最後は経営陣の強い後押しが必要です。
成功した企業はどこも、内製化を重要経営課題として扱っていました。
内製化し、スピーディーに機能改善していくことが、他社に勝つことにつながると考えていたようです。


まとめ

今回はシステム内製化の具体的な事例から、内製化のメリット・デメリットと、成功するための秘訣を探ってみました。
内製化をすることで他社との差別化や顧客満足度の向上につながる反面、内製化のための組織作りが難しいことがわかりました。
内製化を成功させるためには、技術に詳しい方の助言を受けながら経営者の後押しのもと、社内の理解を深める雰囲気作りが大事のようです。